トップページ > 害虫と病気の話 > バックナンバー > 第36話 お天気と病害の発生 シンジェンタのメールマガジンはこちら 情報満載のメルマガ登録はこちら

害虫と病気の話

文字のサイズ変更:
小さく 標準 大きく

 第36話 お天気と病害の発生

 「ひでりに不作なし」という稲作での昔からの言い伝えがありますが、東京では連続真夏日の記録が更新され、甲府では過去最高の最高気温40.4℃の猛暑が7月に記録されるなど、厳しい暑さが身にこたえた今年の夏でした。一方で、例年とは発生や進路の状況が違った台風の影響で福井県美山町では7月18日に88mm/1hrの降水量が記録され、いくつもの県で局地的な豪雨に見舞われ大きな被害を受けたことも記憶に新しいところです。去年の冷夏、今年の猛暑だけでなく、世界各地から報じられる近年の異常気象の頻発は地球の温暖化が確実に進行していることを教えてくれています。農業分野でも温暖化への関心が高まっており、米の収穫量への影響、リンゴ・ミカン生産適地の移動、害虫発生状況の変動などの予測が行なわれています。そこで今回は個別の病気についての話でなく、病害の発生と気象との関係について大まかに触れてみることにします。

写真(低温多雨で急激に蔓延するジャガイモ疫病)
写真1:低温多雨で急激に
蔓延するジャガイモ疫病
 
写真(高温多湿で多発生するイネもみ枯細菌病)
写真2:高温多湿で多発生する
イネもみ枯細菌病

 長く続く梅雨空の下でジャガイモの疫病が急速に拡がって畑全面の茎葉があっという間に枯れてしまった、稲こうじ病が平野部でも冷害年に多発生したなどのことを体験した人も多いと思いますが、植物の病害の中にはその発生状況が天候や気温、降雨、風など気象条件によって左右される病害が多くあります。

 ファイトプラズマや線虫が病原となっている病害もありますが、病害の多くはウイルス、細菌、糸状菌(かび)のいずれかの病原体が原因となって発生します。これらの中で、糸状菌は生育適温が25-28℃で30℃を超えると生育が悪くなる菌が多く、比較的高温で発病するイネ紋枯病でも病原菌の生育適温は28-32℃とされています。また、蔓延の伝染源となる胞子の形成や植物体への侵入行動には高い湿度や水滴の存在が必要で、いもち病菌の胞子は侵入行動の途中で水滴が乾くと死んでしまいます。したがって、糸状菌病ではどちらかと言うと低温で曇雨天が続く気象条件で多発生となる病害が多いといえます。例外はうどんこ病で、炎天下にカボチャの葉が真っ白になっているのを見かけるように、晴天が続く夏の乾燥した条件の下でも蔓延します。これは、うどんこ病菌の胞子は吸水能力が高く湿度50%程度でも発芽できるためであることが知られています。

細菌病の感染にも水滴が必要です。細菌は細胞の分裂によって増殖しますが、35℃種類によっては39℃程度まで生育可能で、糸状菌の生育が抑えられる高温下でも活発に増殖できます。水滴中で増殖した細菌は水滴中を泳ぎまわり、あるいは風雨とともに飛散して植物体の気孔などの開孔部や傷口から侵入して新たな感染を引き起こします。したがって高温であっても雨が多い場合には細菌病が多発する危険性が大きいといえます。
 一方ウイルス病の場合には、アブラムシ、ウンカ、アザミウマ、コナジラミなどの虫によって媒介される病気が多く、これらの媒介虫類が繁殖しやすい晴天で高温乾燥の天候が続く場合に発病が多くなると想定されます。

 わが国では1941年から発生予察事業が行なわれており、各県で主要な病害虫の発生状況の把握と発生予測が毎月行なわれています。気象状況の変化や発表される発生予察情報に関心を持ち、状況に応じた適切な病害虫防除をしたいものです。


シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問
     吉野 嶺一

2004年9月6日掲載

● バックナンバーを見る

→→第37話ミカンキジラミの発生地域の拡大―カンキツグリーニング病の媒介虫―

トップへ戻る このページのトップへ戻る