トップページ > 害虫と病気の話 > バックナンバー > 第8話 カイガラムシ類の生態と防除対策 情報満載のメルマガ登録はこちら
第8話 カイガラムシ類の生態と防除対策
カイガラムシは昆虫の分類上、半翅目に属しており、同じ目にはアブラムシやウンカ、ヨコバイ、セミなどがいます。 カイガラムシは産まれた後、移動できるのは数時間で一度定着すると足もなくなり一生同じ場所で生活しているマルカイガラムシ類のようなものもあれば、コナカイガラムシ類のように一生を通じて移動できるものもあります。 カイガラムシ類は果樹や庭木などの樹木の重要な害虫として知られています。お茶のクワシロカイガラムシ(写真1)は害虫の中で、その被害(写真2)が最も問題になっている害虫です。平成12年に農水省果樹試験場が行った各県(常緑果樹対象)に対するアンケート結果でも、アカマルカイガラムシやナシマルカイガラムシ、ヤノネカイガラムシ(写真3)が増加傾向にあると回答している県がありました。また、当社が行ったミカン農家に対するアンケートでは、33人の回答者のうち30人は最近カイガラムシが増えていると回答していました。今年の果樹園や茶園でのカイガラムシの防除対策について考えてみましょう。
今年のカイガラムシの発生時期の予測 今年のさくらの開花は観測史上はじまって以来の早い開花でした。このように、春先の気温が高い年のカイガラムシの発生はどうなるのでしょうか? 柑橘類を加害するヤノネカイガラムシの第一世代1令幼虫の発生は3月の平均気温と関係が深く、1令幼虫の初発生日はY=60.4-4.41X(Yは4月25日を起点日とした日数、Xは3月の平均気温)で計算できます。今年の静岡県清水市の平均気温は12.3℃でした。予測式に3月の平均気温を代入すると、Y=60.4-4.41x12.3となり、Yは6.16です。つまり、4月25日から6.16日(約6日)後の5月1日に幼虫が発生してくることになります。初発生日の平年値は5月13日ですので例年より12日はやまる予測結果でした。4月に入ってからの気温は平年より高めに推移しているので、発生日はさらに早まることが予測されます。このように、カイガラムシ類の発生は温度によってその早晩は大きく左右されています。 今年のカイガラムシ類の発生は例年より早まる可能性が高いので、防除時期を早める必要があります。
カイガラムシの防除が難しい理由と防除対策 カイガラムシの防除がむずかしいのは、その名前が示すように卵や虫体が蝋物質を中心とした被覆物質によって覆われている(写真4)ことです。そのため、薬剤を散布しても被覆物によって遮断され薬液が虫体にかかりにくいことがあげられます。また、成虫やその卵嚢から生まれてくる幼虫は発生が始まってから順次発生し、その発生期間は長いものでは数週間に及ぶものもあり、いろいろな発育ステージの幼虫が混在していることになります。 以上のようなことから、カイガラムシの防除には、幼虫の発生時期を的確に把握して、虫体に被覆物が十分に形成しない幼虫がピークになる時期に防除を行うことが大切となります。クワシロカイガラムシの場合、幼虫の発生ピークから1-5日後、ヤノネカイガラムシの場合、幼虫発生のピークから約2週間後が防除適期とされています。このようにカイガラムシの防除はその種類によって防除時期は異なるので、防除しようとするカイガラムシの生態をよく知ったうえで防除を行うことが大切です。
スプラサイドはカイガラムシの特効薬 最近の果樹園や茶園への殺虫剤使用はネオニコチノイド系が主要な殺虫剤として使用されるようになってきました。しかし、多くのネオニコチノイド剤はコナカイガラムシ類やロウムシ類(写真5)に対する活性は強いものの、他のカイガラムシに対する活性はあまりありません。カイガラムシの発生が多い園では他の殺虫剤を使った防除を実施したいものです。 スプラサイドはカイガラムシを中心とした防除薬剤として約30年間も使われている殺虫剤です。硬い介殻を形成するヤノネカイガラムシは他の殺虫剤では2令幼虫の発育ステージまでしか防除できませんが、スプラサイドは更に発育の進んだ未成熟成虫(写真6)まで防除することができます。また、成虫は防除することはできませんが、薬剤の散布された成虫からの産卵数は少なくなることが報告されています。 カイガラムシは潜在性の害虫でいつの間にか増えて被害を受けることになります。スプラサイドはほとんどのカイガラムシに対し殺虫活性が強いので、収穫時期や剪定時期にカイガラムシが見られた園では、そのカイガラムシの防除適期にあわせ、年に1回は必ず防除を実施したいものです。
シンジェンタ ジャパン株式会社開発本部 技術顧問  古橋 嘉一
2002年4月26日掲載
● バックナンバーを見る
→→第9話「イネいもち病」
このページのトップへ戻る