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第6話 侵入害虫防除の今と昔
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第6話 侵入害虫防除の今と昔
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最近、トマトハモグリバエやミカンキイロアザミウマ等外国から入ってきた侵入害虫の被害が大きな問題になっています。外国から入ってきて、新しい土地に住み着いた昆虫を帰化昆虫と呼んでいますが、それらが害虫だった場合、「侵入害虫」とも呼ばれています。わが国で侵入害虫が問題になるようになったのは、江戸時代の鎖国状態が明治時代に開国され、外国との間にヒトと物の交流が盛んに行われるようになってからでした。当然、わが国の害虫も外国へ渡って大きな被害を与えている例もあります。アメリカに渡ったマメコガネは300種もの植物を食害する大害虫となり、「ジャパニーズビートル」のありがたくない名前がつけられています。外国へ渡った害虫は、原産地からは「侵略害虫」になるのでしょうか? 交通機関のめざましい発達は、多くの物質とヒトが国境を越えて行き来するようになっています。これらの交流を通じて、好ましくない昆虫も検疫の眼をかいくぐって入ってくる機会が多くなってきました。これから、国際的な交流がますます盛んになることや地球の温暖化に伴い、我々が意図しないような侵入害虫に遭遇することが多くなることでしょう。
主な侵入害虫の歴史
明治時代からの主な侵入害虫を表にしてみました。明治時代にはこの他にも多くの害虫が入ってきていますが、特徴的なのは果樹害虫が多いということです。開国により外国から珍しい果樹を積極的に取り入れた結果でしょう。ヤノネカイガラムシ(写真1)やイセリアカイガラムシ(写真2)、ルビーロウムシなどの定着性害虫が導入された苗木とともにもたらされています。昭和になると、クリタマバチやヤサイゾウムシ(写真3)が入り、第2次大戦後はアメリカからアメリカシロヒトリが、そして、輸入される農産物とともに色々な害虫が入り、わが国の重要な主要害虫となっています。これらの害虫は輸入される芝や牧草、花、野菜などにまぎれて侵入したものとされ、現在、野菜類ではオンシツコナジラミ(写真4)やシルバリーフコナジラミ(写真5)、ミナミキイロアザミウマ(写真6)、ミカンキイロアザミウマ(写真7)、トマトハモグリバエ(写真8) マメハモグリバエ(写真9)は重要な難防除害虫と位置づけられています。
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写真1 ヤノネカイガラ虫の寄生した果実 |
写真2 イセリアカイガラムシ |
写真3 ヤサイゾウムシ成虫 |
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写真4 オンシツコナジラミ成虫 |
写真5 シルバーリーフコナジラミ成虫 |
写真6 ミナミキイロアザミウマ 成虫と幼虫 |
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写真7 ミカンキイロアザミウマ成虫 |
写真8 トマトハモグリバエ成虫 |
写真9 マメハモグリバエ成虫 |
日本における代表的侵入害虫
| 害虫名 |
加害 植物 |
侵入または 発見年次 |
侵入源国 |
対象害虫に登録のある主な シンジェンタ製品 |
| サンホ―ゼカイガラムシ |
果樹類 |
明治初期 |
アメリカ? |
スプラサイド乳剤40 |
| リンゴワタムシ |
同上 |
明治5年(1872) |
同上 |
― |
| ブドウネアブラムシ |
ブドウ |
明治15年(1882) |
同上 |
スプラサイド水和剤 |
| ルビーロウムシ |
ミカン など |
明治17年(1884) |
中国? |
アクタラ顆粒水溶剤、スプラサイド乳剤40 |
| ヤノネカイガラムシ |
ミカン |
明治31年(1898) |
中国 |
スプラサイド乳剤40、スプラサイド水和剤 |
| イセリアカイガラムシ |
果樹類 |
明治41年(1908) |
アメリカ |
スプラサイド乳剤40、スプラサイド水和剤 |
| ヤサイゾウムシ |
野菜類 |
昭和15年(1940) |
アメリカ |
― |
| クリタマバチ |
クリ |
昭和15年(1940) |
中国 |
― |
| アメリカシロヒトリ |
各種 樹木 |
昭和20年(1945) |
アメリカ |
― |
| ジャガイモガ |
ジャガイモなど |
昭和28年(1953) |
オーストラリア |
― |
| シバツトガ |
芝 |
昭和39年(1964) |
アメリカ |
― |
| オンシツコナジラミ |
野菜、花 |
昭和49年(1974) |
アメリカ? |
スプラサイド乳剤40、スプラサイド水和剤、チェス粒剤、チェス水和剤 |
| イネミズゾウムシ |
イネ |
昭和51年(1976) |
アメリカ |
アリババ箱粒剤 |
| ミナミキイロアザミウマ |
野菜、花 |
昭和55年(1980) |
東南アジア? |
アクタラ顆粒水溶剤、アクタラ粒剤5、スプラサイド水和剤 |
| アルファルフアータコゾウムシ |
マメ科牧草 |
昭和58年(1983) |
アメリカ |
― |
| シルバーリーフコナジラミ |
野菜、花 |
平成元年(1989) |
アメリカ? |
アクタラ顆粒水溶剤、アクタラ粒剤5、チェス粒剤 |
| ミカンキイロアザミウマ |
野菜、花、 果樹 |
平成2年(1990) |
ヨーロッパ? |
アファーム乳剤、マッチ乳剤 |
| マメハモグリバエ |
野菜、花 |
平成2年(1990) |
中南米? |
トリガード液剤、アクタラ粒剤5、アファーム乳剤 |
| トマトハモグリバエ |
野菜、花 |
平成11年(1999) |
中南米? |
(アファーム乳剤、トリガード液剤) |
| 注:梅谷(1991を改変) |
シルバーリーフコナジラミはタバココナジラミに名称変更されました ()内の製品は適用拡大申請中です
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侵入害虫の防除対策
・農薬が無い時代の防除は? 突然新しい害虫が出現した場合、現在では優れた農薬と外国からの情報を基にその防除は比較的容易ですが、有機合成農薬がなかった明治から昭和20年代まではどのように防除を行っていたのでしょうか?イセリアカイガラムシやヤノネカイガラムシの場合、最初寄生樹の伐採と焼却によって周囲への広がりを防ぐのが主な対策でした。そして、色々な防除が試みられましたが、主な防除方法として行われたのは、青酸ガス薫蒸(写真10)でした。一本ごとにテントで覆いガス薫蒸を行う方法です。 この方法による防除は有機合成農薬が出現する昭和30年代まで行われていたのです。 天敵の導入も盛んに行われ、イセリアカイガラムシに対するベダリテントウムシ、ルビーロウムシに対するルビーアカヤドリコバチ(11)などの天敵での成功例やブドウネアブラムシのように耕種的防除方法で解決された例もあります。
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写真10 青酸ガス薫蒸 |
写真11 ルビーアカヤドリコバチ |
・現在の侵入害虫防除対策 現在ではインターネットを使っての情報検索が容易となり、侵入害虫が入った場合、DNA解析により、どの地域から入ったかが特定でき、その地域でどのような薬剤が防除効果があるのかも知ることができるようになりました。例えば、最近、トマトハモグリバエが新しい侵入害虫として問題になっていますが、この害虫は中国でも大きな問題となっている害虫で、既に多くの農薬の試験事例があり、それらを参考にして有効農薬を選定することができることになります。当社では、アファームやトリガードをトマトハモグリバエの防除薬剤として登録申請中です。 また、当社ではほとんどの侵入害虫に対し登録農薬を擁しています。
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(写真提供:静岡県農場試験場 池田二三高)
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シンジェンタ ジャパン株式会社 開発本部 技術顧問 古橋 嘉一 2002年2月28日掲載 |
● バックナンバーを見る
→→第7話「ネギさび病」
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