「知って食べるともっとおいしい」消費者とつながる新しい形「ポケットマルシェ」。

2018/7/13(金)

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  • 株式会社ポケットマルシェ取締役の本間勇輝様

    株式会社ポケットマルシェ取締役の
    本間勇輝様

ネット上で農産物や海産物を直接消費者に販売するサービス「ポケットマルシェ」。
生産者が出店するメリットはどこにあるのでしょうか?また利用する消費者はどのような方々なのでしょうか。
株式会社ポケットマルシェ取締役の本間勇輝様におうかがいしました。


ユーザーに背景を知ってもらい安売りしない仕組みを作る

──ポケットマルシェの仕組みを教えてください。

ポケットマルシェは生産者がインターネットを通して、生産物をユーザー(消費者)に直接販売できるサービスとして2016年9月に立ち上げました。
ショッピングサイトの楽天やフリーマーケットサイトのメルカリなどのように、個人間で売買をすることができます。
それらウェブサービスとの大きな違いは、生産物を売るだけではなく、FacebookのようなSNS機能があることです。
ユーザーは生産者をより深く知った上で商品を購入できます。
生産者は出品している生産物に、圃場の情報や栽培、収穫の様子、生産者の思いなどを投稿、ユーザーは生産者の思いを確認して、商品を選んでいきます。
手書き風ポップなど工夫して投稿される方もいるんですよ。

  • 各地から様々な生産物が出品されています。

    各地から様々な生産物が出品されています。

  • 生産者のページには栽培や収穫の情報を自ら書き込むことができます。

    生産者のページには栽培や収穫の情報を
    自ら書き込むことができます。

さらに、購入後、ユーザーはInstagramのように届いたときの感想やどんな風に料理して食べたかなどを画像と共に投稿することもできます。

  • 手書きポップはネット上でも目を引きます。

    手書きポップはネット上でも
    目を引きます。

  • 届いた農産物にいいねを押すだけではなく、画像やコメントが寄せられています。

    届いた農産物にいいねを押す
    だけではなく、画像やコメントが
    寄せられています。

  • SNS感覚でどんな食べ方をしたかを画像とともに投稿する方も多く見られます。

    SNS感覚でどんな食べ方をしたかを
    画像とともに投稿する方も
    多く見られます。

──SNSのようにユーザーとコミュニケーションを取ることでどんなメリットがありますか?

これまで、生産者が食べた人とつながる機会はあまりありませんでした。
たとえ、マルシェに出店、販売しても、食べた「後」の「おいしかった」「こんな風に調理した」といった感想を聞くことは、簡単にはできません。
それが、本サービスでは、生産者の作物に対する思いを表現し、それをユーザーと共感できるんです。
何十もの「ごちそうさま」が届くとやっぱり励みになりますし、よりリアルに消費者・マーケットを知ることができますよね。

さらに、ユーザーと会ったことはなくても、ポケットマルシェを通じたコミュニケーションで、信頼が築かれ、「安い」だけを勝負にする必要がないという利点もあります。
直売所などではほかの生産者さんたちとの価格競争になりがちですが、栽培に対する思いや産地の情報をていねいに提示することで、安さだけを売りにする必要がないのです。

──生産者は現在どのくらいの方が登録されているのですか?

生産者は農家さんが約650名、漁師さんが約50名です(2018年6月現在)。
作目は多種多様で、出品する生産者も全国に渡っています。
大きく分けると野菜や果樹の出品が約4割ともっとも多く、米や穀物は2割程度。
ほかに牛乳、卵、肉や加工品も数多く出品されています。
また、全体の1割弱が水産品の出品です。
ユーザーは毎月10万人強がポケットマルシェに訪れていて、多くがリピーターになってくれています。
先月は1か月で50万円を売り上げる生産者も出ました。
手数料として弊社が15%いただきますが、残りはすべて出店者の収益となります。
また、配送料も弊社の趣旨に賛同してくれた発送業者のおかげで、一般の配送料よりかなり安くおさえているのも魅力です。

ネットを通して生産物を販売したい生産者は少なくないでしょう。
でも、販売サイトを作ったり、配送手続きをしたりするのは手間がかかります。
ポケットマルシェはその手間を最低限に抑えられることが大きな特徴です。
スマホでSNSに投稿する感覚で、販売を開始でき、あとはユーザーからの注文に応じて箱詰めするだけ。
配送業者がユーザーの住所・氏名を書き込んだ伝票をもって引き取りに来てくれますので、発送作業の手間も最小限です。

きっかけは、東日本大震災の被災地で見たもの

──そもそも、なぜ、ポケットマルシェを立ち上げようと考えたのでしょうか。

国内の第一次産業が担い手不足や高齢化が深刻であるのは周知の通りで、私たちはその課題の根底に「作る人と食べる人のかい離」があるのではないかという思いがあります。

顔が見えないから買い叩く、しわ寄せが生産現場に行っている。
でも裏を返せば、両者が関係を築けば、様々な課題解決につながっていくのではないか。
その思いをより深くしたきっかけは東日本大震災でした。

ご存知のように被災地の第一次産業は壊滅的な打撃を受けました。
岩手・宮城・福島にとって、第一次産業は基幹産業。
私たちなりになんとかできないかと考えたのが始まりでした。
そのとき、目に留まったのがボランティアの姿でした。

震災後、東北ではたくさんのボランティアが復興支援に携わり、その中にはカキの養殖場など第一次産業の復興に関わった人たちも数多くいました。
寒空の下、カキの殻むきを手伝い、そのとき食べたおいしさが忘れられずに顧客としてリピーターになって何度も購入するといった人も少なくありませんでした。
そこに被災地の課題解決のヒントがあるのではないかと考えたのです。

──生産者と消費者の距離が縮まることが、第一次産業の課題解決につながるということでしょうか。

  • 「世直しは食直し」をキャッチフレーズに冊子とともに食を届ける「東北食べる通信」

    「世直しは食直し」をキャッチフレーズに
    冊子とともに食を届ける「東北食べる通信」

生産者の皆さんが消費者にもっと産地を知ってほしいと思っているように、消費者ももっと産地や生産者を知りたいという気持ちが強いことに気づいたのです。
ならば、生産現場と消費者をつなげることができると復興にもつながるのではないかと、「東北食べる通信」という生産者を取材し、まとめた冊子と共に生産物を販売するというサービスを始めました。
食べ物を情報といっしょに届けるために、私たちはあえて紙媒体にこだわりました。
これが多くの人に支持をされたのみならず、両者の関係性を作ることにつながるとも評価され、2014年にはグッドデザイン賞で全体2位の評価をいただきました。

「東北食べる通信」は東北だけではなく、全国各地でその土地の情報とともに農産物を届けるという取り組みとして37地域に広がり、現在も続いています。
一方で紙媒体では紹介する生産者や産地に量的な限界があるのも確かです。
もっと多くの生産者の多種多様な生産物を紹介し、ユーザーとのつながりを作っていきたいと生まれたのがポケットマルシェです。

意味のある消費を求めるポケットマルシェのユーザー

──「販売作物に込められた思いに共感して購入する」ポケットマルシェのユーザーはどんな方々でしょうか?

「産地のことなど知らなくてもおいしければいい」という考え方もありますが、「知って食べればもっとおいしい」、そして「その感動を伝えたい」。
そこに価値を見出しているユーザーには、「意味のある消費を求めている人たち」という共通項があると思います。
そういった意味でポケットマルシェのユーザーは非常に質が良いと自負しています。

購入後、生産者のページに「おいしかった」「こんな風に調理した」と画像をつけて投稿してくれている人たちの多くはリピーターになってくれています。
生産者が「最近結婚しました」と投稿したら、すごい数の「いいね」がついたり。
ほかのサービスでは、なかなか生まれないコミュニケーションです。
それだけ、産地や生産者を身近に感じながら利用しているユーザーが多いということではないでしょうか。
もちろん、個人間の売買ですので、すべての生産者がユーザーと良好な関係を築いているわけではありません。
残念ながら1回限りの購入で終わってしまうこともあります。
生産者の思いや熱量も質のよいユーザーをつかむために大切であることも実感しています。

──今後はどのように発展させていきたいと考えていますか?

もっと規模を拡大していきたいというのがひとつです。
ポケットマルシェでは出店するために一定の審査基準がありますが、それをクリアすれば誰でも簡単に利用できるサービスです。
多くの生産者に出品していただき、よいユーザーとつながっていただきたいと思います。

一方で、規模の拡大に伴ってユーザーの質が変化するのではないかという懸念もあります。
ポケットマルシェは価格だけが売りではないという反面、消費者からすると「安い」が大きな魅力であることも確かです。
規模が拡大するにつれて、安さだけを求める声が増えていくのではないかという懸念もあります。
私たちができるのは規模の拡大と並行して「意味のある消費」を求めるユーザーを呼び込む取り組みや仕掛けをしていくことだと思っています。
そういった取り組みのひとつとして、ネット上のつながりだけではなく、農業体験などを通じて産地や生産者とユーザーがリアルにつながる機会も増やしていければと考えています。

──最後に生産者にメッセージをお願いします。

単純に「消費者とつながるって楽しいですよ」とお伝えしたいですね。
そして良い消費者とつながることが生産者にとっても大切であることもお伝えしたいです。
ポケットマルシェの強みは「ファンを増やす」ことにあります。
ファンを持っていることは生産者の強みです。
ポケットマルシェに出店して収益そのものは年間の売り上げの一部であったとしても、それを買ってくれるユーザーの声はとても貴重なものです。
その声にたくさんのヒントがあります。
ぜひ、それを体感し、ご自身の生産現場に活かしていただければと思います。


ポケットマルシェ
https://poke-m.com/

東北食べる通信
https://daily.tohokutaberu.me/

2018年7月13日掲載