IT企業が目指す農業の未来は「楽しく、かっこよく、稼げる農業」
株式会社オプティム

2018/2/2(金)

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(株)オプティムは2015年より佐賀大学、佐賀県とIT農業三者連携協定を結び、農業のIT化を推進しています。
産学官の取り組みはなぜ始まったか、どんな成果を得ているか、そして今後どのような未来を描いているのか。
(株)オプティムインダストリー事業本部マネージャーの瀬戸恒太郎さんと、インダストリー事業本部広報チームリーダーの村上健さんにうかがいました。

  • (株)オプティムインダストリー
    事業本部マネージャーの
    瀬戸恒太郎さん(右)と、
    インダストリー事業本部
    広報チームリーダーの村上健さん

  • (株)オプティムの入り口にはたくさんの特許証明書が飾られています

    (株)オプティムの入り口には
    たくさんの特許証明書が飾られています


「楽しく、かっこよく、稼げる農業」を実現する三者連携

  • (株)オプティム開発の「OPTiM Agri Drone」

    (株)オプティム開発の
    「OPTiM Agri Drone」

──貴社が佐賀大学農学部と佐賀県農林水産部とのIT農業三者連携協定を結び、農業に取り組んだきっかけを教えてください。

弊社の代表取締役菅谷俊二は、佐賀大学農学部出身で、在学中に(株)オプティムを起業しました。
そのご縁で2015年5月に佐賀大学農学部が60周年を迎えた記念式典に菅谷が招かれ、講演をしたことがきっかけです。

若い世代が農業をやってみたいと思うような魅力的な産業にするためにITでできることはないかと当時の農学部長の渡邉啓一先生から相談を受けたのです。
そこで佐賀大学の農業に関する学術知見や人材育成、佐賀県の実用的な知見と農業のノウハウに、私たちのソフトウェアを開発する力を融合させるIT農業三者連携協定を結び「楽しく、かっこよく、稼げる農業」をスローガンに掲げ、共同研究に取り組んでいます。

──農業のIT化は各地で盛んですが、産官学の三者連携することの強みにはどのようなことがあげられますか?

佐賀県や佐賀大学の協力を得て実証実験を行うことで、農業に関する様々なデータを蓄積していける点が強みです。
共同研究では佐賀県内の7カ所の圃場で28品目の農作物に関する多様なデータを集め、デジタル化してきました。

AIやIoTは、プログラムを開発することも大切ですが、並行して重要なのはデータをどれだけ蓄積していくかという点です。
そして圃場の膨大なデータを蓄積できるのは、生産者さんと直接つながりのある佐賀県や佐賀大学との連携があるからこそです。

――ITで「稼げる農業」とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

デジタル化したデータを元に生産性向上や収量の増加など増やせる物は何か、逆に資材のコストや労働時間、病害虫被害など減らせることは何かをそれぞれ指標として表していきます。
それを元に、生産者の負荷を減らし、農作業の質を高め、収益を増やすためにできることを、AIを使って解析、実施するのです。
そのプラットホームとして圃場情報管理サービス「Agri Field Manager」を構築しました。
これは、ドローン、スマートフォンや各種センサーで撮影した映像や画像を、AIを用いて分析し、効果的に作物の生育を管理するサービスです。

※IoT=Internet of Thingsの略。物のインターネットという意味。様々な「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。


ピンポイントで病害虫を検出、駆除するシステムとは?

――病害虫の発生状況をディープラーニングでAIに学習させ、ピンポイントで病害虫を発見し、駆除するシステムを開発されたとのこと。これはどのような仕組みですか?

弊社が開発したドローン「OPTiM Agri Drone」(以下、アグリドローン)で上空から圃場を見て、図1(空撮画像のGPSマッピング)のように全体を撮影したものを区分けし、AIがその画像を解析すると、図2のように葉の画像から害虫を検知したエリアを視覚化することができます。
この部分にピンポイントで農薬を散布するのです。
仮に害虫が葉の裏に潜み、その姿が上空からは見えなくても、葉の食害を検知して探し当てることができます。
散布の際にはドローンの羽根が風を巻き起こし、葉が風圧で大きく揺れ動くので、葉の裏側にまで農薬を散布できます。
これまで病害虫が発生すると、圃場全体に薬剤を散布するのが一般的でした。
しかし、この方法なら病害虫が確認された場所だけにピンポイントで薬剤を散布することが可能で、その分の経費や労力を削減することができるのです。

  • 図1 圃場全体をアグリドローンから空撮し、290カ所に区分け

    図1
    圃場全体をアグリドローンから空撮し、
    290カ所に区分け

  • 図2AIが図1を解析すると39カ所で害虫や葉の食害を検知。ここにピンポイントで散布

    図2
    AIが図1を解析すると39カ所で
    害虫や葉の食害を検知。
    ここにピンポイントで散布

――実証実験に参加された生産者さんの反応はいかがでしたか?

  • 陸上走行型のドローン OPTiM Crawler

    陸上走行型のドローン
    OPTiM Crawler

最初は半信半疑です。
でも実際に害虫を発見し、農薬をピンポイントで散布するまでを体験されると「おおっ!」と驚かれますよ。
広い圃場で人の目で葉の1枚1枚を確認していくことは非常に時間がかかってしまう作業になりますが、AI技術ではそれがドローンで圃場を撮影し、画像解析の結果、問題がある箇所を自動的に指摘することが可能になります。
そのことを実際の圃場でご自身の目で確認すると感動されるんです。

またドローンを飛ばせないビニールハウス内で、トマトやイチゴ栽培の生産者さんなどからの要望もいただいています。
そこでハウスの中で自動走行をする農業ロボット「OPTiM Crawler」を開発しました。
360度を同時に撮影できる全天球カメラを搭載しており、作物の葉や実を撮影しながら、AIがその画像を解析し、収穫の適期を見極めることができます。


様々な業種の人と共に未来の農業を創る

――2018年1月12日には「スマート農業アライアンス」を発表されました。これはどのような取り組みなのでしょうか。

「スマート農業アライアンス」は生産者だけではなく、企業や金融機関、自治体、大学なども含めて、農業に関係する多様な業種の人たちがスマート農業を実現する未来志向を持った農家の方々を中心とした取り組みです。

農家の皆様が自ら積極的にスマート農業に取り組んでいければと考え、様々な企業、自治体・学術機関の皆様にも参画いただきサポートをしていきたいと考えております。
2017年12月に第1次募集を開始しましたが、すでに100件以上の申し込み・問い合わせを頂戴しております。

――「スマートやさい」とはどんなものを想定されていますか。

弊社の圃場情報管理サービス「Agri Field Manager」や、ハウス情報管理サービス「Agri House Manager」、ロボティクスサービスのドローンを用いてのピンポイント農薬散布テクノロジー、農作業記録・GAP支援サービス「Agri Asssistant」などを利用して栽培された農作物を「スマートやさい」としてブランド化する構想です。
実際に2017年に佐賀県内の実証実験で収穫した大豆を百貨店で試験的に販売したところ、非常に大きな反響をいただき手応えを感じました。
今後「スマート農業アライアンス」を通じて、全国の生産者さんとつながりながら、取り組みを広げていきたいと考えています。


誰でも簡単にアクセスできるような農業のIT化を目指す

──貴社が開発されているAI技術など最新のIT農業は、ITにはあまり詳しくないような人でも、簡単に使用できますか。

  • 取材中の様子

    取材中の様子

もちろんです。
むしろ、ITに精通していない方が手軽に使えるようなシステムを構築することを目指しています。
弊社は以前、NTTのフレッツ光の契約時に同梱されたCD-ROM「フレッツセットアップツール」というソフトを開発し、これが多くの人に支持されたことが飛躍するきっかけになりました。
このソフトを開発する以前はインターネットに接続するためには業者に依頼するなどの労力がかかっていましたが、「フレッツセットアップツール」を使いCD-ROMの手順通りに行えば、誰でも簡単にインターネットに接続できるようになったのです。

弊社は理念として「ネットを空気に変える」を掲げています。
ITは特別な人のためのものではなく、「フレッツセットアップツール」のように誰でも簡単にアクセスできる空気のような存在であるべきだという考えなのです。
農業に関してもその姿勢で取り組んでいます。

――これらのIT農業を実用化していくための課題にはどのようなことがあげられますか?

課題というよりも生産者さんのニーズに応えて、これからも新しい開発に取り組んでいきたいと思います。
私たちはIT分野のプロですが、農業のプロではありません。
プロの農家と連携を取り、「こんなことに困っている」、「こういうことがITで実現できない?」といった御提案をいただきながら、その声にITがどう応えられるかを模索していくのが私たちの仕事です。
生産者だけではなく、農業に関する様々な分野の方々とつながりながら、これからも「農業×IT」で日本の農業を変えていくことを目指していきます。


(株)オプティム
https://www.optim.co.jp/
(株)オプティムスマート農業ソリューション
https://www.optim.co.jp/agriculture/

佐賀大学農学部
http://www.ag.saga-u.ac.jp/
佐賀県農林水産部
https://www.pref.saga.lg.jp/list00187.html

2018年2月2日掲載