部品メーカーが作った農業ロボット、アグビーは、農家の来年を応援する"農家の相棒"

2017/12/25(月)

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  • 農業用ロボットアグビー。(農業ワールド 2017 の出展会場にて)

    農業用ロボットアグビー。
    (農業ワールド 2017 の出展会場にて)

「農家の相棒」がキャッチフレーズの小型の農業用ロボットは、農業とは縁のない中西金属工業(株)が製作しました。
なぜ異分野の企業が農業用ロボットを手がけたのでしょうか。
どんな思いを込めて製作したのでしょうか。
今月は、中西金属工業(株)E事業室アグリイノベーションチームでアグビーの開発を担当した木村光希(こうき)さんにお話を伺いました。


"「なぜ?どうして?」が開発の種に"

── 農業と直接関係のない貴社が、台車ロボット、アグビーの開発に取り組まれたきっかけを教えてください。

弊社は中西金属工業(株)という名前の通り、ベアリングリテーナーやコンベアシステムなどを製造するメーカーで、私は金型設計などを行っていました。
それが4年前に社の方針として、「時代の変遷に合わせてイノベーションを起こせるような人材を育成する」ことが掲げられ、始まったプロジェクトに、私を含めたメンバーが参加したことがきっかけです。
最初に慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の奥出直人先生に指導を受けながら「デザイン思考」を学んだのですが、それにあたってテーマを選定しました。
それが農業でした。
その理由はとても個人的なことで、私自身が農業をやってみたかったんです。
私は周囲に田畑があるような場所で育っているので、将来的には就農したいと漠然と思っていました。
その気持ちにプロジェクトに参加する仲間も賛同してくれたと同時に弊社の上層部にも、高齢化や後継者難などの農業の課題への関心が高く「農業でイノベーションを」という意見が少なからずあったと聞いています。

──そもそも「デザイン思考」とはどのような考え方なのでしょうか。

デザインというとグラフィックデザインなどを思い浮かべるかもしれません。
しかし、この場合は、人の働き方や行動をデザインすることを指します。
対象を観察し、課題を見つけ出し、その解決のためのアイディアを出します。
それを元に製品やサービスのプロトタイプ(原型)を作成し、実際に対象者にテストしてもらうなどの試行錯誤を繰り返しながら完成させ、課題解決につなげるという考え方です。

具体的には大阪・泉州地区の水なす生産者、草竹農園の草竹茂樹さんにアドバイザーとしてご協力をいただきました。
私たちは足繁くほ場に通い、草竹さんの作業を事細かくメモし、それを持ち帰り、分析したり、ディスカッションしたりしながら課題を見つけていきました。
農家さんにとっては当たり前の作業も、私たちには知らない世界。
「なぜ、この作業をしているのか?」と疑問に思う私たちの"?"マークが、開発の種になりました。

  • 中西金属工業株式会社 入り口

    中西金属工業株式会社 入り口

  • 中西金属工業株式会社 アグリイノベーションチームのプロジェクトルーム

    中西金属工業株式会社
    アグリイノベーションチームの
    プロジェクトルーム


日々の作業を楽にする“相棒”

──生産者の行動を観察した結果、追従型ロボットを開発しようと思ったのはなぜですか?

早朝からの農作業を見ていると、収穫してかごに入れて台車を押すという作業の繰り返しでした。
この中から「押す」をなくすと作業が楽になるのではないか?と考えたのが出発点です。
草竹さんも同じようなお話をされていましたし「相棒のような機械があったらいい」という希望も聞いていたので、人の歩いた後をついて歩く農家の"相棒"のようなロボットを作ろうというアイディアが生まれました。
試行錯誤しましたが、プロジェクト開始から約3年かけてプロトタイプを完成させ、2016年に初めて幕張で開かれた展示会に出展しました。

──そのときの来場者の反応はいかがでしたか?

当時は人の後を追従する台車ロボットとしての基本的な機能は備えていたものの、外見は現在のような形ではなく、ベニヤ板で作った簡素な物でした。
それでも反響は大きかったですね。
年配の方から若い女性までたくさんの農家さんから関心を持っていただき、価格やどこで買うのかなど具体的なことも聞かれ、これはいけるのじゃないかと手応えを感じることができました。
その後、いつも農家さんのそばにいる"相棒感"を出すために、見た目にもこだわり、「かわいいから一緒にいたい」と思ってもらえるようなスタイリッシュなフォルムにしようと、今の形になったのです。


"百姓の来年"を応援したい"

──開発にあたって想定した生産者はどういった方だったのでしょうか。

  • 中西金属工業株式会社 E 事業部アグリイノベーションチーム木村光希さん

    中西金属工業株式会社 E事業部
    アグリイノベーションチーム
    木村光希さん

ターゲットとして描いていたのは中・小規模農家です。
ほ場を見える化することができますから、大規模農家さんにとっても魅力あるツールだと思っています。
農家さんは私たちが驚くほどひとりで何役も兼ねて仕事をしています。
水やりやせん定などのほ場管理、収穫、箱詰め、出荷はもちろん、経営管理や、販路拡大の営業、6次加工まで。
多岐にわたる仕事の中から、肉体的に負担がかかることはお手伝いするので、あまった時間をより農業を充実させる方に使っていただきたいんです。
開発当初"百姓の来年を実現する"をコンセプトにしていたのですが、これは農家さんと話していて「来年はこうしたい」という話をよく聞いていたことがヒントになりました。
農家さんは常に来年のことを考え、動いています。
アグビーで負担軽減したことで、その来年を支援したい。
空いた時間を新しいことに使って、来年はより豊かなライフスタイルを作ってほしい。
そんな思いを込めて開発しました。


"データを蓄積してGLOBAL G.A.P.支援にも"

──アグビーには台車機能だけではなく、畑を見える化する機能もあるとのことですが、これはどういった仕組みなのですか?

台車とは別に土に埋める土壌センサーを備え付けることで、土中のPH値、EC値、地温、湿度の4つを定期的に計測し、中継地点を介してクラウド上のサーバーにデータとして集めることができます。
今、スマホやタブレットで使うアプリも開発しているので、データを蓄積することで見える化し、収穫量予測や病害虫予測などにも使える機能開発を目指しています。
さらに技術の継承にも応用できます。
水やりひとつとってもベテランの方なら葉の裏側を見れば適した時期かどうかがわかりますが、新規就農者や研修に来たばかりのような方は分かりません。
そういった意見も現場で聞いていたので、経験やノウハウを伝えるようなところでお役に立ちたいと思っています。

──その機能を使って2018年の試験的な販売と同時に、草竹農園を中心に予定しているGLOBAL G.A.P.支援にも取り組むそうですね。

GLOBALG.A.P.は東京オリンピックを見据えて関心の高まりが予想されますが、たくさんのチェックリストがあり、難しそうだと躊躇する農家さんが多いと聞いています。
でも、内容的には農家さんが当たり前にされていることも少なくないと思いますので、GLOBALG.A.P.用にアプリを作り、取得したデータをまとめて書類を印刷できるようなシステムを作りたいと考えています。

──最後にこれからアグビーをどんな風に進化させていきたいと考えていますか?

2018年秋にアグビーを試験販売する予定です。
これからまだまだ試行錯誤が続き、課題もたくさんありますが、日本の農業が大きく変わろうとしている中で、アグビーがあっちこっちのほ場で動いているといいなあと夢を描いています。
そのために、私たちが絶対にやらないと決めているのは、部屋の中だけで物を作ることです。
ほ場に出向き、農家さんと一緒に開発し、"あの人"のために作ることを大切にしています。
これからも農家さんの声に耳を傾けアグビー完成させ、進化させながら、農家さんの来年を応援し続けていきたいですね。
 

 


中西金属工業のアグビーについてもっと詳しい情報はこちらをご覧ください。
https://nkc-innovation.com/

2017年12月25日掲載