注目は空からの精密農業。進化する農業技術が一堂に介した「農業ワールド2017」

2017/11/30(木)

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10月11日から13日までの3日間、幕張メッセにて「農業ワールド2017」(以下、農業ワールド)が開催されました。
農業ワールドは、「第7回国際農業資材EXPO」、「第4回国際次世代農業EXPO」、「第2回国際6次産業化EXPO」3つの展示会を同時開催するイベントです。
今回で8回目を迎え、出展企業は国内外から800社、来場者数は4万2761名を数えました。
高齢化や後継者不足といった課題や、大規模化していく変化に対応する新技術が一堂に会しました。
今回は農業ワールドの様子をレポートします。


活気づくドローン市場と、広がる可能性

  • 「農業ワールド2017」の中でも「第4回国際次世代農業EXPO」では最新技術が展示されていました。

    「農業ワールド2017」の中でも
    「第4回国際次世代農業EXPO」では
    最新技術が展示されていました。

農業ワールドの今年のキーワードはスマート農業、精密農業。
スマート農業とは「ロボット技術やICT(情報処理や通信に関連する技術、産業、設備、サービスなどの総称)を活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」と定義されています。

一方の精密農業とは「複雑で多様なばらつきのある農場に対し、事実を記録し、その記録に基づくきめ細やかな営農管理を行い、収量、品質の向上及び環境負荷低減を総合的に達成しようという農場管理手法」を指します。

数多く出展されていたのが「農業用ドローン(マルチローター式小型無人機)」です。
本メルマガ178号(2016年6月末配信)でもお伝えしたように、2015年12月改正航空法が施行し、無人航空機の飛行禁止区域や飛行方法などが規定されました。
ドローンによる農薬等の空中散布に関する法整備が整ったことで、今後ますます農業用ドローン市場は活気づいていくのではないでしょうか。

そのような中で特に勢いを感じたのが中国に本社を置くDJIJapanです。
同社は商業用ドローンの世界シェア70%を誇るトップメーカ-。
販売をてがける(株)スカイロボットは、農林水産航空協会認定のオペレーター養成スクール、DS・Jを全国に展開しています。
出展された「AGRASMG-1」は9.5kgと軽量で、折り畳みができる機種。
軽トラックの荷台にも載せられるため搬送しやすく、女性でも使い勝手のよいコンパクトな機体です。
コンパクトでありながらも、タンク容量は10L、1haを約10分で農薬散布できる能力があります。

機体には3つのレーダーが搭載されていることで、地形の高低差も認識でき、従来の無人ヘリコプターでは難しいとされていた中山間地域や狭小地にも対応できるとのこと。
機能面ではアタッチメントを変えることで粒剤の散布、将来的に法整備されれば播種なども可能となるということもあり、会場内では「AGRASMG-1」の実演も行われ、多くの来場者が足を留めていました。

  • DJI JapanのAGRAS MG-1

    DJI JapanのAGRAS MG-1

  • 軽量で折り畳むとさらにコンパクトに。

    軽量で折り畳むと
    さらにコンパクトに。

  • 株式会社オプティム開発の「OPTiM Agri Drone」

    株式会社オプティム開発の
    「OPTiM Agri Drone」

次世代のドローンとして注目されるのが、最新のAI(人工知能)を活用するタイプです。
そのひとつが、株式会社オプティム開発の「OPTiMAgriDrone」。
これは、ドローンに搭載したカメラから農地を撮影、データを収集し、解析することで、病害虫の早期発見や生育管理を行うことができるそうです。
オプションとして、ピンポイント農薬散布や害虫駆除なども可能と効率のよい農作業をめざした機能が充実していました。
「たのしく、かっこよく、稼げる農業」を掲げる同社は、佐賀県・佐賀大学と連携して農業に特化したIT活用を推進し、注目されています。


人手不足を補う農業用ロボット

  • 中西金属工業(株)のアグビー。

    中西金属工業(株)のアグビー。

小型で小回りがきき、小規模の生産者でも導入しやすい農業用ロボットも多く出展されていました。
特に注目されていたのが中西金属工業(株)の「アグビー」です。
「アグビー」は「農家の相棒」がキャッチフレーズの小型の農業用ロボット。
会場で「かわいい」という声も上がっていた丸みを帯びたフォルムが特徴です。
人が歩く後を追従し、作業道具や収穫物の運搬などを行います。
小さいながらも稼働時間は8時間、最大積載量は100kgと、農作業の相棒として十分な能力です。
ルート設定をすることで自立走行も可能で、農薬散布も行えます。
別途「土に埋めるセンサー」も開発し、水分量、地温、PH値などのデータを取得・蓄積し、独自開発のアプリと連動させて解析することで、ほ場を可視化することが可能です。
AI機能も開発し、蓄積されたデータを元に、将来の収穫量予測や病気発生の事前防止もできるので、栽培計画にも役立てられます。
これらのデータをほ場管理にも使用でき、2018年度秋よりGLOBALG.A.P.認証の取得を、大阪府の生産者と共にチャレンジする予定です。
他には運搬機能に特化した追従運搬ロボットや、人工筋肉で腰の負担を軽減させるマッスルスーツなども出展されていました。

  • 追従運搬ロボット THOUZER

    追従運搬ロボット THOUZER

  • マッスルスーツ スタンドアローン。

    マッスルスーツ スタンドアローン。


ほ場を管理する多彩な支援ツール

  • ウォーターセル社(株)が開発したアグリノート。航空写真の画像を使って農場を俯瞰できます。

    ウォーターセル社(株)が
    開発したアグリノート。
    航空写真の画像を使って
    農場を俯瞰できます。

農作業記録などのデータを蓄積しながらほ場を管理、その蓄積データを元に効率的な農業経営を支援するツールも増えています。
そのひとつが、新潟県のウォーターセル社(株)が開発した「アグリノート」です。

スマートフォンやタブレット、パソコンなどの情報端末による農作業の記録管理や入力データの自動集計が可能で、さらにほ場を俯瞰した航空写真を活用し、視覚的な農場管理が行えます。JAやバイヤーなど外部との情報共有も可能で、1ユーザー年間6,000円と導入しやすい価格も魅力です。すでに登録ほ場は10万箇を数え、大規模経営の生産者に向けたデータ登録代行サービスも行っています。

  • ボッシュ(株)のプランテクト。左から温度湿度センサー、CO2センサー、日射センサー、通信機

    ボッシュ(株)のプランテクト。
    左から温度湿度センサー、
    CO2センサー、
    日射センサー、通信機

また、施設栽培に特化した支援ツールとして出展されていたのが、BOSCHのAIによる病害予測機能を搭載した「プランテクト(Plantect)」というサービス。

「プランテクト」は写真のような形状で電池で動く手のひらサイズ。
設置するだけで、ハウス内をモニタリングしながら、病害の発生を予測できるというものです。
病害予測精度は同社の実証実験で92%にに達したそうです。
モニタリングによって取得したデータは、クラウドに蓄積され、それを解析し、農薬散布のタイミングなどを教えてくれます。初期費用は不要、基本プランは月々4,980円とお手頃です。モニタリングであればどの作物にも対応していますが、病害予測は現段階でトマトのみに対応しています。
病害予測は今後、ほかの作物にも取り組む予定とのことでした。


大きく変わる日本の農業とそれを支える最新技術

今回の農業ワールドの各社の出展の共通項をあげると、農業の様々な課題解決にITやAIの技術を活用している点でした。
人手不足や、大規模化する担い手生産者のサポート、中山間地域などでの作業の効率化、害獣対策、そして農業の継承。
山積するこれらの課題に、ITやAIがどんな解決策を提示できるかを、模索しているようでもありました。
中でもAIの進化は、これまで知恵や経験で行ってきた栽培技術をデータ化、オートメーション化することにより、農業の現場が大きく変化することを予感させるものでした。
栽培作物、地域など異なる状況ごとに最適なソリューションを提供し、現在の課題を解決する。
そんな近未来の日本農業の一部を垣間見ることができた農業ワールドでした。


2017年11月30日掲載

◎今回紹介した各製品の詳しい情報はこちらをご覧ください
DJI Japan
http://www.dji.com/

株式会社オプティム「OPTiM Agri Drone」
https://www.optim.co.jp/

中西金属工業(株)アグビー
https://nkc-innovation.com/

追従運搬ロボット THOUZER
http://tana-x-thouzer.com/

マッスルスーツ スタンドアローン
https://innophys.jp/

ウォーターセル社(株)アグリノート
http://www.agri-note.jp/

BOSCH プランテクト
http://www.bosch.co.jp/corporate/ja/jp/our_company_6/business_sectors_and_divisions_6/plantect/plantect_startpage.html