病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
「ふきのとう」はフキの若い花茎と蕾の部分
9

フキ属(Petasites )について

栽培植物の中には、野生種から選抜された後、品種改良などがほとんど加えられていないものがありますが、フキもその一つです。フキはキク科に属する雌雄異株の多年生植物で、栽培もされる食用作物です。もともと自生していた野草で、丘陵地や原野、耕地の周辺、路傍などにごく普通に見かけられます。国内に自生するフキ属(Petasites)には本州の岩手県以南から九州沖縄まで分布するフキ(Petasites japonicus)と(写真1)、亜種で北海道から東北北部に多く分布するアキタブキ(Petasites japonicu susp.giganteus)があります(写真2)。栽培作付面積は全国で700ha強で、関東以西に多く愛知県と群馬県が2大産地となっています。アキタブキのなかでも秋田県内で栽培されているものを特にアキタオオブキということもあり、加工用に1haほど栽培されている他、観光用に僅かに栽培されています。また属は違いますが関東から沖縄の海岸付近で良く見かけられるツワブキ(Farfugium japonicum)(写真3)は園芸用にも食用にも利用されます。

  • 写真1:フキ(開花期)

  • 写真2:アキタブキ

  • 写真3:自生するツワブキ

 フキはサハリン原産とされており、耐寒性に優れる植物で、繁殖源である地下茎は寒地でも越冬し、2月〜4月ころに花茎を出して、その茎の先端に白い可愛らしい花をつけます。私達が姿揚げやフキみそなどで食用にする「ふきのとう」は、この若い花茎と蕾の部分です。雌株の花茎は開花後長く伸びて45cmくらいになるので雄株とは区別できます。花におくれて、長い葉柄をもつ円状の特徴的な葉を数枚出します。この葉がフキの最も特徴的な部分ともいえますが、アキタブキは全体的に大型で特にアキタオオブキは葉柄が1.5m、葉の幅が1m以上になるものもあり、子供がすっぽりと隠れてしまうほどです。煮物などに利用するのは一般的には葉柄の部分ですが、若い葉ならば細かく刻んで煮物にも利用されるようです。また伽羅蕗は本来はツワブキの葉柄の佃煮ですが、フキの細い葉柄を使って作ることもあります。

 フキ類の繁殖は地下茎をのばし、そこから萌芽して次々と個体を増やす栄養繁殖によるものが多いようですが、アキタブキやフキの野生種では種子を生産し有性繁殖をする2倍体のものもあります。フキの栽培種は一般に3倍体であるので種子はつかず、そのため交雑による品種育成が困難であるため、品種改良などはほとんど行われてきませんでした。栽培時に個体を増やす場合は一般に株分けによります。そのため野生種(雑草種)と栽培種との形態的、遺伝的な差があまりないとされています。

 フキは日本人にとっては身近な食材でありますが、その一方、生育場面が変われば、雑草と位置付けられてしまいます。先にも述べたように耐寒性に優れているため、寒冷地ではしばしば耕地に侵入して雑草化しています。なかでも北海道内の草地に進入しているアキタブキは厄介な存在です。一度進入すると主に地下茎で繁殖し、また家畜がほとんど食べないので牧草を圧迫します。吸収移行タイプの茎葉処理除草剤などで防除しても、長く伸びた地下茎を完全に枯らすのは困難で、生き残った部分から翌春萌芽してきて、個体を増やします。一部は種子でも繁殖して遺伝的な多様性を維持しながら着々とその勢力を拡大しようとしているように見えます。アキタブキは以前から寒地型草地の代表的な強害雑草と認識されていましたが、最近では特に道内各地で問題視されています。(写真4、5)

  • 写真4:牧草地のフキ(1)

  • 写真5:牧草地のフキ(2)

 一方フキ同様食用にもされるツワブキは、関東以西では路傍や海岸線の岩場などによく見かけられますが、耕地に侵入して雑草として問題になっている例はあまりなさそうです。こちらは秋〜冬にかけてキク科らしい大きな黄色い花を咲かせます。深緑の光沢をもった葉は、いかにも照葉樹林の林床植物の趣を持っています。

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 開発部
中谷 英夫

2004年2月27日掲載

ページの先頭へ戻る