病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
雌しべと雄しべの両性花、雄しべしかない雄花の2種類の花をつける
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ツユクサ属について

 ツユクサは田畑の強害雑草として知られていますが、近年グリホサート系除草剤の普及の拡大に伴い、いっそうクローズアップされています。非選択性の除草剤であるグリホサートを散布した場合、同じ薬量でも雑草の種類によって効果に差が出ることがしばしばあります。しかしなぜかツユクサは多草種に比べて薬が効き難く、散布後にこの草だけが枯れ残ったりすることがよくあります。もちろん薬量を増やせばある程度効果はあるのですが、今日ではグリホサート系除草剤で枯れにくい草の代表種となっています。

 ツユクサ科は世界に約25属350種ほどあり国内では帰化種を含め5属が報告されています。この中で畑地に生育する主な雑草は、ツユクサ(Commelina communis )とマルバツユクサ(Commelina benghalensis )で、いずれもツユクサ属の仲間です(写真1)。マルバツユクサは関東以西の海岸近くの砂地に多く、茎は地を這うように伸び、耕作地に侵入します(写真2)。南海の海岸沿いのみかん園などでは大群落をみかけます。花はツユクサより小さく、秋になると地中に果実をつけます。また小学校の理科の教材で使うオオムラサキツユクサ(Tradescantia virginiana :ムラサキツユクサまたは単にツユクサと呼ばれることもある)もツユクサ科の植物です(写真3)。こちらは北米原産の園芸種で、広く庭園や花壇などに栽培されていますが、生命力が強いためか、野生化しているものも見かけます。

  • 写真1:マルバツユクサ

  • 写真2:畑に生育するマルバツユクサ

  • 写真3:オオムラサキツユクサ

写真4:道路ぎわのツユクサの群落

 さて雑草のツユクサは畦畔、路傍、水田、畑地、樹園地や庭先等の日当たりのいい場所に生育し、北は北海道から南は九州・沖縄まで全国的にみることができる一年生草本です(写真4)。花は6月〜9月ごろ咲き、茎の先端の節から貝殻のような包に包まれた青紫色の美しい花を咲かせます(写真5)。この色の美しさゆえ、ツユクサの変種の一つであるオオボウシバナは京都の友禅染の下絵用染料を取るために、滋賀県草津市あたりで古くから栽培されていたそうです。ツユクサの美しい色の正体はコンメニリンといい、アントシアニン、フラボン、マグネシウムからなる化合物によって青色に見えることが明らかにされています。

写真5:ツユクサの花
貝のような包につつまれている

 ツユクサの花は結構面白い構造になっていて、一見2枚に見える花びらは実は3枚あり、そのうち2枚は青紫色でしかも大きいため目立ちますが、よく見ると白色の小さなもう1枚の花びらが見つかります。また雄しべは長さの異なる3種類を持ち、最も長い雄しべが2本、先端が黄色く短いのが3本、そして中間の長さの雄しべが1本で、合計6本です。長いほうの2本は先端に花粉を出します。中間の長さの雄しべも花粉を出しますが、長い2本より明らかに量が少ないです。一方、先端が黄色い3本の雄しべは花びらの青紫色に映えてことのほか目立つのですが、この3本は花粉を出しません。ではこの花粉を出さない3本の雄しべ、無用の長物かというとそんなことはなくて立派な役割があります。それは昆虫を引き寄せるということです。私達から見てとても美しくみえる青紫の花は昆虫から見るとあまり魅力的でなく、黄色の雄しべが昆虫を引き寄せるのに役立っていると言われています。

写真6:ツユクサの花
上が雄花、下が両性花

 しかしツユクサの受粉方法としては主に自家受粉であることが知られています。一年生のツユクサの繁殖方法は種子生産によるわけなので、一個体だけでも次世代を残せる自家受粉システムは不安定な環境下で雑草として生き抜くためには都合がいい訳です。それなのになぜわざわざ昆虫を引き寄せるための工夫をしているのでしょうか。幾つかの研究によるとツユクサは僅かながら昆虫による他家受粉により、個体群の遺伝的多様性を維持していることが示唆されています。またもう一つ特徴的なのは、ツユクサは草本では珍しく同一株に雌しべと雄しべを持つ両性花と、雄しべしかない雄花の2種類の花をつけることです(雄性両全性同株という)(写真6)。このような性表現型をとるのも昆虫をひきつけて他家受粉を促進していることと関係があるのでしょう。

 ツユクサがいかにして雑草として環境に適応し、今日のように繁栄しているのか、この謎を解くかぎはこの不思議な花にまつわる特徴を含め、今後の研究によって明らかになっていくでしょう。

 参考文献:大原雅編(1999)「花の自然史」北海道大学図書刊行会

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部開発部
中谷 英夫

2003年11月21日掲載

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◎水田畦畔、畑地などのツユクサに、根こそぎ枯らすパワー除草「茎葉処理除草剤 タッチダウンiQ」
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