病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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トビイロウンカ

写真1 トビイロウンカ成虫

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東南アジアでは多収性品種「IR-8」を主役とした「緑の革命」が本種の大発生によって挫折したことは広く知られ、その対策として耐虫性品種がひろく利用されてきました。
我が国では平成17、18年にはトビイロウンカが西日本で数十年ぶりに大発生しました。この重要な稲害虫はセジロウンカとともに梅雨期に毎年海外から日本に飛来し、これが繁殖して晩夏から被害を生じますが、稲の収穫後には低温のためにすべて死滅します。現在その飛来源は中国南部ないしベトナム北部などの亜熱帯アジア地域と考えられています。したがって、日本での毎年の発生量は、飛来源での発生量、日本への飛来をもたらす気流の有無、日本の水田での飛来後の増殖状況で決まります。ここ2年続きの異常発生は、飛来源での主要栽培品種がトビイロウンカ耐虫性品種から感受性品種に代わり、本種の発生量が激増したためとみられています。

写真2 トビイロウンカ幼虫

被害:成虫が飛来したのち、約1ヶ月の間隔でさらに3回成虫が出現します。そして8月末頃から無数に増えた幼虫が稲茎に蜜集して汁液を吸い取って加害します。本種の特性として水田の一部に固まって増えるため、少なくとも毎月2回は水田中央部まで分け入って、株元を念入りに観察しないと手遅れになります。典型的な症状は「坪枯れ」といわれる局部的なものですが、激甚な被害では水田全面が枯れてしまいます。
防除:耐虫性品種利用が中心である東南アジアとことなり、日本では完全に農薬に依存しています。近年は粒剤の育苗箱施薬がさかんに行われていますが、この場合はウンカの飛来侵入時期が残効期間内であったかどうかを注意せねばなりません。茎葉散布では昆虫成長調節剤あるいは殺虫剤から有効なものを選びます。殺虫剤では散布時期が重要です。成虫、幼虫とも殺虫剤で素早く駆除できますが、卵が生き残るために密度回復がかならず起きるので、発生経過を把握して卵が少ない時期に散布しないと効果は半減します。散布時期の1週間の違いが対照的な結果をもたらすこともあります。トビイロウンカの殺虫剤抵抗性は飛来源での殺虫剤使用量によって変動します。過去30年間の観測結果を概観すると、以前よりも殺虫剤が効きにくくなっています。的確な情報にもとづいて薬剤を選ぶことが肝要です。

 

鯉渕学園農業栄養専門学校
講師
永田 徹

2006年7月13日掲載

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