病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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斑点米カメムシ類の対策

※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

1.斑点米カメムシとは何か?

写真1:カスミカメ 畝間

写真2:カスミカメ 稲葉

写真3-1:クモヘリカメムシ

カメムシは、多くの種類は扁平な体で亀のような形をしていることから「亀虫」とかかれ、別名クサガメやヘッピリムシ(椿象)、英語ではstinkbug「臭い虫」といいます。ちなみに、カメムシが所属する半翅目(Hemiptera)は細長い吸収式の口器をもつ昆虫のグループで、世界では約55000種が知られ、昆虫の中では甲虫目、鱗翅目、膜翅目、双翅目に次いで大きいグループです。

カメムシ類は日本では350種余りがいて、稲穂から養分を吸汁し屑米や斑点米を形成する斑点米カメムシと呼ばれるものは、そのうちの10数種の総称です。米の生産調整が始まり、米の品質が注目され始めた1970年以降から問題になりました。日本だけでなく海外の稲作地帯でも斑点米カメムシ類は問題になっています。

今回は斑点米カメムシの全般的なことについて述べることにします。北海道・東北地方で問題になっているアカヒゲホソミドリカスミカメについては第21話を参照してください。

2.カメムシ類は今どこにいるのか?

全国的にはカスミカメ類、東北地方南部以西ではクモヘリカメムシ、またイネカメムシやホソハリカメムシは本州以南、西南暖地ではミナミアオカメムシ、シラホシカメムシが生息しています。いずれの地域でも雑草地で繁殖し、出穂後に稲穂を加害するパターンは共通しています。

カスミカメ類は冬場、畦畔、休耕田、堤防などのイネ科植物やイネ科牧草類、ムギ類の葉鞘内で卵態で越冬し、5月後半から成虫が現れます。また、成虫で越冬したカメムシ類(クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ)も5月後半から活動し始めます。その後、いずれも越冬地や周辺のメヒシバやエノコログサの群落で生存・繁殖します。6月後半になると、カスミカメ類やシラホシカメムシ類の一部は水田に移動します。クモヘリカメムシやイネカメムシなど穂依存性の高いカメムシ類は水稲出穂後に水田に侵入します。完熟期以後は雑草地に移動して、晩秋になると越冬地に戻ります(図1)。

  • 写真1:カメムシ類の水田への侵入時期と発生消長

3.カメムシ類と被害の多発要因

全国の水稲作付面積は約170万ha、平成12年以降、斑点米カメムシ類の発生面積は全国で50万haを越えた年もあり、最近でも水稲面積の4分の1強に発生しています。

統計上カメムシの多発生は暖冬年あるいは並冬年に続く夏季高温年に見られます。さらに水田、休耕田、畑地、堤防などを含む水田域生態系のエノコログサやメヒシバ、(エノコログサ、メヒシバなどのイネ科雑草については雑草の話 第4話を参照してください)ヒエ類、そしてイタリアンライグラス、カラスムギなどの繁茂がカメムシ類の多発を助長しています。

斑点米の多発要因については、発生予察および要防除水準が不備であること、現地では防除しないか、あるいは適期に防除されていない(一例としては、いもち病とカメムシの同時防除の場合、カメムシにとって防除時期が合わない)こともあげられています。

  • 写真3-2:クモヘリカメムシによる被害
    クモヘリカメムシの吸汁
    により発生した屑米(左)

  • 写真3-2:クモヘリカメムシによる被害
    クモヘリカメムシの吸汁
    により発生した健全米(右)

  • 写真3-3:クモヘリカメムシの卵塊

4.発生量と被害量-要防除密度

つくば地区の水田で調査したクモヘリカメムシと被害との関係を述べますと、直径36cmの捕虫網5回振りで、成虫数0.8頭を捕獲した無防除区で精玄米の0.7%(検査3等米に相当)に斑点米被害が出ました。カスミカメの場合、要防除水準がさらに低く設定されています。例えば1等米を得るには、捕虫網50回振りで1頭捕獲されたら防除するという地域もあります。

イネの品種と被害との関係ではカスミカメ類は内外頴の隙間から吸汁するので、低温・日照不足で割れ籾になりやすい品種に斑点米が発生しやすいことが知られています。

5.防除は「ダブル・ストラテジー」、まず雑草抑制、そして多発時薬剤防除

写真4:ホソハリカメムシ

写真5:カメムシなど害虫類の
侵入を抑制するために
植生管理された水田
(撮影:石川県農業
総合センター 笠島哲氏)

病害虫管理の基本は「清耕栽培」にあると昔から言われてきたように、カメムシ類防除の基本も、水田域や畦畔の雑草管理にあります。遅くとも出穂10日以上前に地域一斉の草刈りを終えることが有効で、これにより地域のカメムシ密度を低下させ、水田への飛来を抑制できます(写真5)。

それでもカメムシの発生数が多いときには薬剤散布を行う「ダブル・ストラテジー」を採用してください。防除薬剤は液剤、粉剤、粒剤など多数登録されており、開花期と開花後3週間以内に2回散布(侵入成虫とその子世代幼虫防除)すれば屑米と斑点米は軽減します。

移動性に富むカメムシ類の防除の実際は、地上散布やラジコンヘリなどによる広域一斉散布が効果的です。しかし、生産コストおよび防除者や周辺環境への安全性、薬効向上の観点から、粉剤や液剤ではドリフト防止、粒剤では湛水散布の励行、そして掛け流し禁止など使用法を守ってください。収穫後の斑点米を含む変色米の選別に穀粒判別機を利用しているところもあります。

6.今年の発生は

この春から、水田域や畑地のスズメノテッポウやメヒシバなどの雑草地を観察したところ、ホソハリカメムシやカスミカメの発生が見られ、その一部が水田に侵入しています。6月後半以降は、エノコログサやメヒシバ群落にクモヘリカメムシが発生しているのを確認しました。

2000年ほどの大発生になるとは思えませんが、夏季に高温が続くと発生が増加するでしょう。これから出穂期を迎えて、カメムシが水田に侵入しやすくなりますので、畦畔や水田内のカメムシの発生を頻繁に観察するとともに、病害虫防除所等から発表される発生情報をもとに、防除対策を立てることが必要です。

 

農業生物資源研究所
研究企画官
平井 一男

2005年7月15日掲載

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