病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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水稲初期の害虫対策のポイント (1)

3月になると稲作が始まります。水稲作は苗半作と言われるように健全育苗が基本です。幼苗は柔らかく各種の病害虫に寄生されやすいので、種子消毒、床土消毒、育苗管理などの防除対策が必要です。本稿では種子の準備から移植1カ月頃までの害虫対策について概説します。

※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

イネシンガレセンチュウ

写真1:育苗箱に播種された稲籾

写真2:イネシンガレセンチュウ
による被害粒

まず、センチュウに汚染されていない健全な種子を選定します(写真1)。箱育苗はセンチュウの増殖に好適なので、よく洗浄して使用してください。密植、高温はセンチュウの発生を助長し、わずかなセンチュウでも苗の成長点への侵入を容易にします。また感染苗を移植すると葉先は枯れて無効分けつが多くなり、登熟歩合が減少します。センチュウが籾に侵入すると、収穫後の玄米の腹側に縦または横にくさび状の割れ目が生じる「目黒米」になります(写真2)。防除は種籾の薬剤浸漬が基本で、播種床散布、育苗箱施薬などでも防除できます。

アブラムシ類やウンカ・ヨコバイ類

発芽苗を緑化するために箱苗を野外に置くと、ムギヒゲナガアブラムシやウンカ・ヨコバイ類が集まってきます。幼苗は多数寄生されると枯死するので薬剤で防除します。乾田直播では発芽直後の苗に飛来するので、多発地では播種前に薬剤を粉衣処理します。

移植後の管理

イネミズゾウムシ

写真3:イネミズゾウムシ

 平成17年の今年は国内初発見から29年目となります(写真3)。数年前に比べ減少していますが、已然として全国の水稲作付け面積の40%余りで発生している問題害虫です。越冬後の成虫は5月から水田に侵入するので、常発地では育苗箱施薬が必要となり、播種または移植当日に一箱当たり50~100gを施用します。箱施用剤には単剤、混合剤など多数登録されています。田植え時側条施用法は薬剤混合した肥料を代かき後に側条施肥田植機で苗から3~5cm離した土表面下に条肥する方法が、多くの初期害虫に有効です。

イネドロオイムシ

写真4:イネドロオイムシ

 幼虫が糞を背負っているのでこのように呼ばれています(写真4)。成虫はイネクビホソハムシといい、4~5月植えの早植稲には越冬後成虫が集りやすく産卵数も多いのが特長です。幼虫は乾燥に弱く5~6月の低温湿潤で生存率が高く多発します。したがって寒冷地や高冷地では冷害を受けると、被害はいっそう助長されます。成幼虫ともに7月まで葉表から葉肉を食害します。ほかの初期害虫とともに同時防除が可能です。

ツマグロヨコバイ

写真5:ツマグロヨコバイ

 成虫は横這いし、雄成虫の翅端は黒っぽいのでツマグロヨコバイと呼ばれています。この害虫は茎葉からの吸汁害のほか萎縮病、黄萎病、矮化病を媒介します。また大量の排せつ物(甘露)が葉上に落ちるとスス病が発生し光合成に影響するため生育不良を引き起こします(写真5)。

 初期病害虫には同時防除できる薬剤が多数ありますので、常発地では残効性のある育苗箱施薬剤を活用してください。その他の地域では環境保全の視点から多発時にポイント防除をすると良いでしょう。

 去る2月下旬に発表された3か月予報によると、今年は平年並みの気象ということで、病害虫も平年並みに発生すると考えられます。昨年多発した地域では春先の病害虫発生情報に注意して防除対策を立てることが必要です。

 

(独)農業生物資源研究所研究企画官
平井一男

2005年3月22日掲載

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