病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
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水稲、だいず、麦の問題雑草と除草剤の現状を探る

  • 左:総務部 企画課長の村岡哲郎さん、右:技術部長 田中十城さん

    左:総務部 企画課長の村岡哲郎さん
    右:技術部長 田中十城さん

水田や畑地には以前から様々な雑草が繁茂してきましたが、近年では、水田の多年生雑草、だいずの外来雑草、麦の抵抗性イネ科雑草など、除草剤での防除が難しい雑草が問題化していると言われています。

水稲、畑地の問題雑草とその除草剤について、公益財団法人 日本植物調節剤研究協会の技術部長 田中十城さん、総務部 企画課長の村岡哲郎さんにお話を伺いました。

※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

現在、水稲ではどのような雑草が問題になっていますか。

全国的にみるとノビエは一番の問題雑草で、戦前の手取り除草時代から続く雑草です。
また、全国的ではないものの、近年、深刻な問題となっているのが地下に塊茎をつくるタイプの多年生雑草。
特にオモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイなどは除草剤の単用処理では防除が難しく、苦労されている産地が多いのではないでしょうか。

  • オモダカ

    オモダカ

  • オモダカの塊茎

  • クログワイ

    クログワイ

  • クログワイの塊茎

  • コウキヤガラ

    コウキヤガラ

  • シズイ

クログワイなどの多年生雑草は、なぜ防除が難しいのでしょうか。

オモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイなどの多年性雑草は土壌表層から地下10センチ程度の深さまで養分をたっぷり蓄えた塊茎をつくります。
クログワイに至っては、30センチを超える深さにも塊茎を作り、酸素がほとんどない地下深くからも塊茎中の養分を使って出芽できることが知られています。
散布された除草剤は、地表近くに濃く存在するため、一般的に地表近くから発生する一年生雑草の種子には良く効きますが、地下深くからも発生する多年生雑草には効きにくい傾向があります。
さらに、クログワイやコウキヤガラは、一つの塊茎に数個の芽を持つため、地上に萌芽した芽が除草剤などによってやられても、順次ほかの芽が萌芽して生育するため、初期剤や、一発処理除草剤(一部を除く)のみでの防除が困難となっており、近年の発生報告も増加しています。

クログワイなどの発生が増えている理由はどこにあるのでしょうか。

塊茎をつくることで除草剤での防除が難しいという問題とは別に、生産者側の除草剤の使い方の問題にその理由があると思います。
これは推測ですが、生産者の高齢化や経営面積の拡大にともなって、多年生雑草など後発雑草対策の後期剤散布を省略してしまうケースが増えたのではないかと思います。
また、省力化を目的とした一発処理除草剤の田植え同時処理が増えたことで、田植え以降の時期に散布する場合と比べて残効が早期に切れ、多年生雑草の発生期間をカバーできないことも要因の一つなのではないでしょうか。

水稲用除草剤の現状についてはいかがでしょうか。

歴史をさかのぼると、わが国では終戦後間もない1950年にはじめて水稲用除草剤が導入されました。
その後、1970年までは単一成分による初期剤、中・後期剤といった殺草スペクトラムの狭い水稲用除草剤が主流でしたが、その後混合剤化がすすみ、1980年代には2成分や3成分で構成された初期一発剤および初・中期一発剤といった「一発処理剤」と言われるカテゴリーの除草剤が次々に上市。
そのスペクトラムの幅広さや残効の長さなど使い勝手の良さが評価され、全国にユーザーが広がりました。
現在では、初期剤や中・後期剤の使用面積は国内水田面積全体の3~4割ほどですが、一発処理剤はそれをはるかに上回り、国内におけるほとんどの水田で使用されています。

また、最近では、クログワイなどの多年生雑草に対して優れた効果を発揮する除草剤も開発され、普及が進んでいます。
さらには、クログワイなどの問題雑草対策として、一発剤と後期剤の一般的な体系処理と遜色ない防除効果を示す、「問題雑草一発処理剤」の開発もすすめていて、すでに上市されている剤もあります。

  • 処理法別使用面積の推移

    処理法別使用面積の推移

  • 市販一発処理剤の有効成分数
    (H28推定使用面積5,000ha以上の94剤中%)

畑地雑草ではどのような雑草が問題になっていますか。

だいず畑では、帰化アサガオ類、アレチウリ、ヒロハフウリンホオズキ、イヌホオズキといった外来雑草が問題です。
これらは、主に雑草種子が混入した海外の輸入飼料が国内の家畜に摂食され、その排泄物が堆肥となって拡散したと考えられています。

こうした外来雑草は、播種後の土壌処理除草剤では除草しきれずに残草することがほとんどで、生育期における非選択性の茎葉処理除草剤や機械除草、手取りに頼ることになります。
しかし、茎葉処理除草剤の散布では、作物への薬液の付着を最低限にし、かつ、畦間と株間の雑草を枯らす精度の高い散布機と技術が必要になります。
広いだいず畑での茎葉処理除草剤の散布では、薬液がかからなかった株間の雑草が部分的に残ってしまうのが現状です。

私どもでは、だいず雑草の一発防除技術を鋭意開発中のほか、小規模面積用の畦間・株元散布機「草タイジャー」も開発いたしましたので、興味のある方はぜひ私どものウェブサイトをご覧ください。
日本植物調節剤研究協会ウェブサイト

麦畑での雑草についてはいかがでしょうか。

麦畑の場合は、広葉雑草に効果のある除草剤が充実しているので、広葉雑草はそれほど問題になっていないのですが、スズメノテッポウやネズミムギ、カラスムギなどのイネ科雑草が問題です。
西南暖地のスズメノテッポウは、ジニトロアニリン系やスルホニルウレア系除草剤の連用によって、双方の系統に複合的な抵抗性を持った抵抗性スズメノテッポウが近年増加してきました。

しかし、その後、耕起前に非選択性除草剤、播種後にプロスルホカルブのようなイネ科雑草に高い効果を示す土壌処理剤という除草体系が登場し、抵抗性スズメノテッポウに高い効果を上げているようです。

  • スズメノテッポウ

    スズメノテッポウ

  • カラスムギ 穂

  • カラスムギ 出穂

今後の取り組みについて教えてください。

  • 左:総務部 企画課長の村岡哲郎さん、右:技術部長 田中十城さん

    左:総務部 企画課長の村岡哲郎さん
    右:技術部長 田中十城さん

今後の課題としては、水稲直播栽培での除草省力化と雑草イネ対策です。
移植栽培よりも必要な雑草防除期間が長い直播栽培では、播種後と生育期の体系処理が一般的ですが、それを1回で処理する一発処理剤の開発を推進していきます。
また、雑草イネに対して有効な除草剤の評価・検討も注力していかなければなりません。

水稲も畑作も共通のことなのですが、雑草防除は初期防除が大切で、圃場に雑草がまん延してからでは手遅れになりがちです。
また、雑草は一人ひとりがしっかりとした雑草対策を行うことが重要。
生産者の方々それぞれの除草意識を高めることが、地域としての雑草対策につながります。

雑草イネ対策については、農研機構「雑草イネまん延防止マニュアルVer.2」で詳しくご覧になれます。

 

2017年4月27日掲載

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