病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
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似ている?似ていない? 麦畑の雑草よもやま話

これから出る、もう出ている草の正体を知り、その草たちに対処する。
もし花が咲いてしまったら草の名前を確認しておきましょう。

※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

ネズミムギとイタリアンライグラス

イタリアンライグラスは利用価値の高い飼料作物ですよね。
ところがネズミムギと呼ばれると麦畑の悪役になってしまいます。
どちらで呼んでも、飼料作物であったり、耕地雑草であったり、両面があるというわけですが、でも、同時に二役をこなせるわけではありません。
結局、麦畑に生えると、麦畑の雑草になる、栽培されると飼料作物になる、ということなのでしょう。
このような二面性(あるときは作物、またあるときは耕地雑草)は、ネズミムギ(イタリアンライグラス)に限ったことではありません。
 馬鈴しょ畑のジャガイモと麦畑に生えてくる野良生えのジャガイモ、トマト作でのトマトとその後作でのこぼれ種子から生えてくるトマト、山わさび畑のワサビダイコンと近くの小麦畑に生えてくるセイヨウワサビ、茶花のために育てた露草と畑に生えるツユクサなどなど…。
 つまり「作物は育てましょう、耕地雑草だけ退治してください」ということですね。

オオスズメノカタビラか? ヌマイチゴツナギか??

  • スズメノカタビラ 生育中期

    スズメノカタビラ 生育中期

秋まき小麦の主産地、北海道十勝地方の多くの麦畑には、麦が穂を出す頃になると、同じように穂を出してくる植物があります。
畑一面、ぼんやりと赤味が差してくるのです。
ところが、遠目で見ていると、緑っぽいところが拡がっている畑もあります。
赤っぽいのはレッドトップ(コヌカグサ)。
では、緑っぽいのは何?それはオオスズメノカタビラのようでした。
しかし後年、帯広で調査された報告が出て、「ヌマイチゴツナギがたくさんある」というのです。
オオスズメノカタビラだと言いふらしていたので、ちょっとあせりました。
オオスズメノカタビラは「長い根茎または、ほふく茎を伸ばし、葉舌の多くは先がとがる」。
ヌマイチゴツナギでは「根茎はごく短く、ほふく枝もなくて、葉舌の多くは先が鈍い」とのことで区別は付きそうです。
あらかじめ撮っておいた葉舌の写真を見ると、先がとがっていました。
「よかった、オオスズメノカタビラだった」と胸をなでおろしたものです。
でも、思い込みはいけませんね。
さて、どちらが退治しやすいか、根茎やほふく茎の発達しないほうが扱いやすいですよね。
でも、いずれもイネ科多年生、するべきことは同じなのではないでしょうか。

スカシタゴボウとその仲間たち

スカシタゴボウとイヌガラシ、キレハイヌガラシ、いずれも麦畑の雑草になって、けっこうな悪さをしています。
どれもよく似ていて、それもそのはず、みんなアブラナ科のイヌガラシ属に分類されるくらいですから。
雑草防除の場面では、スカシタゴボウとイヌガラシを間違えてもそんなには困りませんね。
でもキレハイヌガラシをスカシタゴボウと間違えたら、あとで大汗をかくことになります。
ロータリー耕やホー除草で駆除したつもりになっても、横走根を切り刻み、かえって不定芽による増殖の手助けをしただけということになってしまうのですから。
キレハイヌガラシとスカシタゴボウはよく似ているんです。
越冬後のロゼットは色といい形といいそっくり。
でも、根の形は違うんです。
スカシタゴボウやイヌガラシは下に伸びる直根、キレハイヌガラシは横に伸びる横走根です。
丁寧に抜いてみると分かりますよ。

  • スカシタゴボウ 開花期

    スカシタゴボウ 開花期

  • キレハイヌガラシ 生育期

カラスノエンドウとスズメノエンドウ

カラスノエンドウとスズメノエンドウ、名前から似ていますね。
植物分類上もマメ科のソラマメ属で同じ。
子葉を土の中に置いてくるのも同じ。
北海道にはなくて、本州以南で悪さをするのも同じ。
何が違うかというと、カラスとスズメの違いですね。
カラスのほうが大きくて、スズメのほうが小さい。
カラスノエンドウは、もともとヤハズエンドウと呼ばれていて、小葉の先が矢筈(やはず)のようにくぼんでいるからなんだとか。
托葉(たくよう)の中央に大きな腺点(せんてん)あるかないかも、分類上の確実な区別点。
カラスノエンドウが退治できれば、スズメノエンドウも大丈夫でしょう。

  • カラスノエンドウ 幼植物

    カラスノエンドウ 幼植物

  • カラスノエンドウ 生育期

臭う? 匂わない?「イヌカミツレとカミツレモドキ」

  • イヌカミツレ生育期

イヌカミツレとカミツレモドキは似ているようで似ていません。
イヌカミツレは匂いませんが、カミツレモドキは臭います。
イヌカミツレには毛がほとんどありませんが、カミツレモドキにはあります。
葉っぱの形も違います。
羽状に深く裂けるのは同じですが、イヌカミツレの裂片は、細くて肉厚の感じ。
カミツレモドキは少し幅広で平らな感じ。
でも、臭いが薄かったり、葉がいじけていたりすることもあるでしょう。
イヌカミツレはキク科のシカギク属、同じキク科ではあるもののカミツレモドキはカミツレモドキ属に分類されているので、どこかはっきりした違いがあるはずです。
それは、花を分解すると判ります。
カミツレモドキには、花床に白く細長く先のとがったりん片がたくさんありますが、イヌカミツレにはありません。
これが分かれ道です。
初期防除には間に合いませんが、種類の確認はできますよ。
イヌカミツレでもなく、カミツレモドキでもないものもありそうで、困っちゃうかもしれませんが。
どちらも小麦畑では同じような悪さをします。
同じように退治できるでしょう。

驚くべき雑草種子の生命力 !

  • 乳牛に採食され、
    スラリー(発酵牛糞尿)に
    浸漬された種子の発芽率

世界中で防除法が考えられ続け、いまだに世界の耕地雑草として、その名をとどろかせているエゾノギシギシ。
草地では、なんとかエサにする方法まで考えられているようですが、何と言っても種子の生命力がすごいんです。
1株が1年で生産する種子の数、5,000粒。
土の中で、少しは死にますが、5年後でも60%は生きていた、20年経っても発芽した、というくらいです。
酪農地帯の北海道根室地方でも困っています。
少しでも裸地ができると、実生がびっしり。
このタネは、どこからくるのでしょうか? 肥料として草地に散布されたスラリー(発酵牛糞尿)は、もなかの皮のように、草の上で層をつくっています。
よくみると、その層からエゾノギシギシが芽を出していました。

そこで、調べてみました。
飼料のなかに種子を混ぜ込んで、乳牛に食べてもらったのです。
乳牛はもぐもぐと反芻しますから、種子もかなり傷が付くはずです。
糞をいただいて、3ヵ月間スラリー槽に漬けておきましたが、ちゃんと発芽する種子があるのです。
このような生命力はエゾノギシギシに限ったことではありませんが。
雑草防除の基本は、「種子をつくらせないこと」ですね。

~シンジェンタジャパン(株)発行「小麦・大麦雑草防除ガイドブック」より抜粋~

 

2017年3月31日掲載

関連ページ

★「キレハイヌガラシ」について詳しく知りたい方はこちら。
http://www.syngenta.co.jp/cp/columns/view/?column_id=156
http://www.syngenta.co.jp/cp/columns/view/?column_id=80

★「スズメノカタビラ」について詳しく知りたい方はこちら
★「カラスノエンドウ」について詳しく知りたい方はこちら
★「カラスムギやネズミムギの多発圃場には、体系防除」はこちら
★「イヌビエ、スズメノカタビラなどは、は種後の土壌処理が基本」はこちら

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