病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
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非選択性除草剤 抵抗性雑草の現状と上手な除草対策

  • 京都大学 農学研究科 雑草学分野 農学博士の冨永 達さん

    京都大学 農学研究科
    雑草学分野 農学博士の
    冨永 達さん

すでに本特集のバックナンバーでは、水田の抵抗性雑草や畑地の問題雑草といった雑草の現状と対策についてご紹介してきました。
今回は畦畔や休耕田、圃場周辺や非農耕地などに発生する非選択性除草剤の抵抗性雑草にスポットを当ててご紹介します。京都大学 農学研究科 雑草学分野 農学博士の冨永 達さんにお話を伺いました。


※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

非選択性除草剤の抵抗性はいつごろから目立つようになってきたのでしょうか。

  • 除草剤抵抗性雑草の発生推移

    除草剤抵抗性雑草の発生推移

一部の系統の非選択性除草剤に対して、抵抗性雑草の報告が目立ち始めたのは2012年ごろからで、主な要因は同系統の除草剤の連用によるものです。
特定の系統の非選択性除草剤に耐性を持った遺伝子組み換え作物が生産されている海外では、同系統の除草剤連用が常態化しているので、以前から雑草の抵抗性が発達しています。
日本では、その海外から輸入した家畜飼料や麦類・だいずなどに抵抗性雑草の種子が混入していたことが、抵抗性雑草が広がった一因となっているようです。

日本ではどのような抵抗性雑草がありますか。

  • 除草剤散布後も生残したオオアレチノギク

    除草剤散布後も生残した
    オオアレチノギク

イネ科のネズミムギ(イタリアンライグラス)やオヒシバ、キク科のヒメムカシヨモギやオオアレチノギクなどが、一部の系統の非選択性除草剤に対する抵抗性雑草として増えてきているようです。これは特定地域ではなく、日本全国での傾向と言えます。
このような抵抗性雑草が目立つ場所として、ネズミムギが畦畔や麦畑、オヒシバが圃場周辺や駐車場、ヒメムカシヨモギが線路際等、オオアレチノギクが休耕田や路傍などで多く報告されています。

抵抗性雑草が発生する理由について教えてください。

  • 除草剤で雑草が枯れるメカニズム

抵抗性雑草は「作用点抵抗性型」と「非作用点抵抗性型」の2タイプに大別でき、どちらもDNAが突然変異を起こした個体が子孫を増やしてきた結果です。
抵抗性雑草の報告が増えてきた理由は、同系統の除草剤連用によるものですが、DNAが突然変異を起こす原因は同系統の除草剤連用ではありません。
つまり、植物が本来有する突然変異の特性により、結果的に、もともとその除草剤成分に対して耐性の強い遺伝子を持った個体と、そうでない個体が自然界に存在しており、同系統の除草剤を連用した結果、耐性の強い遺伝子を持っていた個体のみが生き残って密度を増やしてきました。
それが抵抗性雑草として報告されるようになったのです。

「作用点抵抗性型」と「非作用点抵抗性型」の抵抗性雑草は、どのように違うのでしょうか。

「作用点抵抗性型」は、植物体組織の酵素を構成する遺伝子のうちの一つが突然変異して発生しますが、「非作用点抵抗性型」は複数の遺伝子が関与しています。

■作用点抵抗性型
そのメカニズムが2種類あって、1つ目は植物体の酵素の立体構造が変化し、除草剤が作用しなくなるタイプ。雑草の酵素をカギ穴に、除草剤をカギに例えると、カギ穴の形が変わってしまうためカギがはまらなくなるタイプです。水田のSU抵抗性雑草に多いようです。
2つ目は、植物体が過剰に酵素をつくり出すことで作用点が増えすぎ、除草剤が作用しなくなるタイプ。カギ穴とカギに例えると、カギ穴の数に対してカギが足らない状態になるので、除草剤の影響を受けなくなってしまいます。非選択性除草剤の抵抗性雑草がこれに該当します。

■非作用点抵抗性型
最近になってそのメカニズムが明らかになりつつある「非作用点抵抗性型」は、雑草が除草剤の成分を吸収して酵素に届くまでの間に解毒(代謝)したり、液胞と呼ばれる細胞の中に除草剤成分を隔離して移行を阻害したりするタイプです。

非選択性除草剤の抵抗性雑草を発生させないためには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。

ポイントは3つあります。1つ目は、異なる系統の除草剤を同時に散布するか、もしくはローテーション使用すること。抵抗性回避には、異なる系統の除草剤の同時散布が理想ですが、2剤同時散布なのでコストが余計にかかることや、組み合わせによっては効果発現までの速度差による効果面での難点もあります。同時散布が難しい状況であれば、異なる系統の除草剤をローテーション散布するようにしましょう。
2つ目は、非選択性除草剤は、適期・適量・適濃度で散布すること。
雑草は草種によって開花時期・種子形成時期が異なります。メインの問題雑草に的を絞って、その雑草が花や種をつける前が散布適期。除草剤のラベルどおりの散布量・濃度で散布しましょう。
散布量を少なくしたり濃度を薄くするなどラベル以外の使い方を続けていると抵抗性雑草が枯れ残り交配する機会が増加することで、抵抗性発達リスクが高まります。
3つ目は、除草剤だけの雑草管理に頼らないこと。適度に機械刈りや手取り除草などを組み合わせてみましょう。

生産者の方に、今後の雑草管理に関してアドバイスがあればお願いいたします。

今後問題になってくるのが、「多剤抵抗性雑草」で、複数の系統の除草剤に抵抗性を持った雑草です。オーストラリアの農場ではこの多剤抵抗性雑草が蔓延し、非選択性除草剤の選択肢がなくなってお手上げ状態になっているという報告があります。
国内では、数年前から多剤抵抗性のヒメタイヌビエが報告されており、対岸の火事ではありません。作業性・コスト面の理由から同系統の除草剤を大量に連用する場合は、特に注意が必要です。
非選択性除草剤の抵抗性は、長い年月をかけて獲得されるので、同系統除草剤の連用やラベル以外の使い方を長年続けていると、リスクは確実に高まるでしょう。

 

2016年11月30日掲載

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