病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
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畑地雑草の発生状況と除草対策

大段秀記上級研究員

大段秀記上級研究員

北海道から九州まで幅広いエリアで問題が深刻化している畑地雑草。
特にイネ科雑草の問題は全国的となっています。麦や大豆の畑地雑草は、収量や品質に大きく影響することからその対策は重要。しかし、実情は、除草剤の使い方を勘違いされて十分に効果を上げられない生産者も多くいらっしゃるようです。
農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センターの水田作研究領域 雑草・土壌管理グループ 上級研究員 大段秀記さんに畑地雑草とその対策についてお話を伺いました。


※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

各地で問題化している畑地雑草ですが、作物にどのような影響を及ぼしますか。

畑地の雑草は、養分競合による減収や品質低下など作物に大きな影響を及ぼします。
大豆作では、収穫時の汚粒の原因になったり、麦作では収穫作業の効率が大きく低下します。
例えば、麦の問題雑草カズノコグサでは、根が浅く簡単に抜けるので麦と一緒に刈り取ることができるため、収穫作業には問題ありません。
しかし、細くて茎がしなやかなスズメノテッポウは、コンバインの刃にはさまりやすく、そのたびにそれを除去しなければなりません。

  • カズノコグサ

  • スズメノテッポウ

大豆作で問題になっている雑草について教えてください。

イネ科ではオヒシバ、メヒシバといった問題雑草のほかに、田畑共通の雑草であるアゼガヤがあります。
これは暖地に多い雑草ですが、穂が細いので畑一面が白っぽくみえるのが特徴的です。
広葉では、アサガオ類、ホソアオゲイトウなどのヒユ類、ヒロハフウリンホオズキなどのホオズキ類があります。
難防除雑草のアサガオ類はマルバルコウ、マルバアメリカアサガオ、ホシアサガオなどがあり、除草剤が効きにくい雑草です。

  • オヒシバ

  • メヒシバ

麦作では、どのような雑草が問題になっていますか。

イネ科では東北以南に多い抵抗性スズメノテッポウを筆頭に、カズノコグサ、スズメノカタビラが問題になっています。
主に北海道で問題化しているスズメノカタビラは、草丈が麦よりも小さいので外からは気づきにくく、収穫時に圃場に入ったらびっしりと繁茂していたというケースも多いようです。
 また、関東・東海・九州などで問題のネズミムギ(イタリアンライグラス)やカラスムギも増加傾向にあります。
ネズミムギの種子は約50日間連続湛水条件にさらされると死滅しますが、九州では普通期米の田植えから中干しまでの期間が40日程度しかないので、いったん種子が圃場に入り込むと個体が増えてしまう傾向にあります。

一方、広葉雑草では、東北以南に多いヤエムグラや暖地に多いカラスノエンドウが問題雑草ですが、近年増加してきたのは、関東以西のハルタデやサナエタデといったタデ科雑草。
土壌処理除草剤の効果がほとんど切れてしまった2月ぐらいから発芽し、茎や花が赤いことから繁茂すると圃場一面が赤くなります。

  • スズメノカタビラ

  • カラスノエンドウ

  • カラスムギの穂

  • ヤエムグラ

  • ハルタデ

九州沖縄農業研究センター調べ
※これまでの発生および被害実態調査等の報告から、問題雑草としての重要度を判断した。


では、これらの雑草の除草対策について教えていただけますか。

除草のポイントは、播種前に非選択性除草剤で雑草をたたいておき、播種後にはできるだけ早いタイミングで土壌処理除草剤を処理。
その後、イネ科よりも発生時期が遅い広葉雑草が残草した場合は、選択性の茎葉処理除草剤で処理するといった体系処理が効果的です。

特に重要なのは「播種前の除草」。
例えばスズメノテッポウでは、1個体につき1000~2000粒の種子をつけますが、播種前から発芽している雑草は1個体につき5000粒と大量の種子をつけ、分げつ数も旺盛になることがわかっています。
たとえ、播種前のすき込み作業を行っても、1~2%はすき込み不足で再生し、大量の種子をつけるので注意が必要です。
播種前から発芽している雑草を非選択性除草剤でいったん除草しておくことで、大量の種子生産を防止し、次年度のシードバンクを減らすことになり、雑草の予防効果につながります。

除草剤を散布するときに注意すべきことはありますか。

播種後に散布する土壌処理除草剤は、先に申し上げたように、播種後できるだけ早く処理するのがポイントです。
また、スズメノテッポウのようなイネ科雑草が多い圃場ではボクサーのようなイネ科雑草に強い除草剤を、イネ科雑草だけではなく広葉雑草も多い圃場ではキックボクサー細粒剤Fのような混合除草剤を選ぶといった、草種を意識した除草剤選択が問われます。
もうひとつ重要なのは、播種後に処理する土壌処理除草剤の使用時期の問題。
例えばボクサーのラベルには、小麦(秋播)の使用時期が「は種後~麦4葉期(雑草発生前~発生始期)」とありますが、遅くまいた方が雑草を一網打尽にできると思い、麦が4葉期近くになってから散布される生産者の方も多いのではないでしょうか。
雑草を取りこぼさない最善策としては、雑草を中心に考えて、雑草の発生前~発生始期で散布するのが一番確実です。
また、播種前の非選択性除草剤、播種後の土壌処理除草剤などの除草剤は、抵抗性を回避するために、2~3年ごとに系統の異なる除草剤をローテーションで使用するのがおすすめです。

圃場だけでなく、圃場の周縁部の除草が大切だとお聞きしましたが。

圃場周縁部の雑草は放置されがちなので、雑草の種子生産量が多く、圃場内のシードバンク増加要因になります。
麦でいえば茎立ちするころ、雑草でいえば開花のころに非選択性除草剤で除草し、種子をつくらせないように周縁部の除草を心がけてください。
こうした雑草の「種子」を意識した、雑草の予防菅理を習慣づけることが、最も効率的な雑草対策であるといえるでしょう。

 

2016年09月30日掲載

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