病害虫・雑草防除ガイド - 水稲雑草シリーズ
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IWMの考え方と除草剤による上手な雑草防除

お米づくりの歴史は、雑草との戦いの歴史といっても過言ではありません。「除草剤の効果が低い」「防除できない雑草 がある」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。そこで、除草剤の適正使用、耕種的防除、雑草動態把握など総合的な雑草対策による 「IWM(総合的雑草管理)」という考え方を中心に、水田雑草防除のヒントを全3話のシリーズでお届けします。 ぜひ、皆さまの雑草防除、稲作経営にお役立てください。
IWM=Integrated Weed Managementの略

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冬期の耕起や田畑輪換、除草剤の体系防除など、
多様性に富んだ雑草管理を。

塊茎は乾燥・寒さに弱いので、ロータリー耕起して塊茎を地表にさらす。

塊茎は乾燥・寒さに弱いので、
ロータリー耕起して
塊茎を地表にさらす。

雑草は水稲栽培期間だけではなく、形を変えながら一年中生きています。たとえば、オモダカやクログワイなどの多年生 雑草は、発生源となる塊茎などの栄養繁殖体が低温・乾燥に弱いため、冬期間の耕起が有効です。また、乾燥や低温に弱い水田多年生雑草は、耕転などの耕種操 作を繰り返すことにより減らすことができます。田畑輪換も水田多年草の発生抑制に有効で、転換畑作を3年間継続した後の4年目に復田したところ、多年生雑 草はほとんど発生しなくなったという報告もあります。

一方、水稲を連作する場合でも、異なる成分から成る除草剤をローテーションで使用することで、特定の雑草の増加を防 ぐことができます。さらに、水稲の栽培期間中でも、可能な限り雑草管理を多様に行うことが重要。手取り除草、機械除草、深水管理、米ぬかなど有機資材の利 用を上手に組み合わせることにより、多様で安定した雑草管理が可能になります。

除草剤も、使用する成分によって得意とする雑草種が異なります。多くの雑草種を一度に防除できるスルホニルウレア系 除草剤であっても、それだけに頼っていると抵抗性を示す雑草が増えてきます。したがって、異なる作用メカニズムを持つ除草剤成分を組み合わせた体系処理が 重要となるのです。

埋土種子への対策と許容限界の策定が、
翌年以降の雑草管理を左右する。

雑草の埋土種子のめやす

雑草の埋土種子のめやす

たとえば、10本のヒエが穂を出している水田には、数千〜数万のヒエの種子があると考えられます。土の中は見えない ので、難防除雑草の侵入初期の段階では埋土種子が増えていることに気づかないことが多いもの。そして、気づいたときには、すでにその雑草にひどく汚染され ています。見慣れない雑草を発見したら、すぐにその雑草の情報を集めて早め早めに対策するよう心がけましょう。

また、雑草による水稲の減収程度は一般的に残草量と密接な関係があります。たとえば、タイヌビエでは1m2あたり1株以下であれば水稲収量に及ぼす影響は小さいとされますが、残った草が多量の種子を落とすことを考慮し、この水準以上に防除しなければならないと考えるのが一般的です。これまでの研究では、翌年以降の雑草管理を考慮したタイヌビエの許容限界は、1m2あたり10g程度とされ、約95%以上の防除が必要とされます。

このように、冬期の耕起、田畑輪換、深水管理などの手法や、除草剤のローテーション使用、雑草の要防除水準を考えて防除するなど、多様な手法の組み合わせ=「IWM」を意識することで、5年後、10年後を見据えた持続的な雑草管理の道筋が見えてくるのです。

 

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター 生産体系研究領域
上席研究員 渡邊 寛明/内野 彰

2011年12月28日掲載

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